慟哭のうた [読書]
田辺聖子渾身の川柳大河小説「道頓堀の雨に別れて以来なり」をようやく
読み終えた。
川柳を、明治から大正、昭和の時代を、人間たちを、岸本水府という稀有の
才能を、そして大阪というまちを描いた素晴らしい小説だった。
道頓堀の雨に別れて以来なり―川柳作家・岸本水府とその時代〈上〉
- 作者: 田辺 聖子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/09
- メディア: 文庫
様々な川柳の運動の流れ、作品の紹介、作家たちのエピソードを紹介して
いるその中に、原爆が「落とされた」あとに被爆者たちが詠んだ川柳がある。
原爆が落とされて、広島、長崎で数多くの川柳作家たちも命を奪われた。
田辺聖子は、「読むだけでも地獄であった」と表現し何十もの川柳を紹介して
いる。ひとつひとつの川柳は、ぜひ本の中で読んでいただきたいと思いますが、
一部をここにご紹介します。(以下本文より引用)
・・・・・・原爆は瞬時に人を殺傷するばかりでなく、永年にわたって社会機構や
人生や人心を傷つけ、人類の遺伝子にさえも影響を与える・・・・・・
・・・・・・どげんもんか煮え湯かぶればわかるじゃろ・・・・・・原爆は
人体の深いところを冒し傷つけ、再生力を奪う。神も仏も哭いている。その怨嗟
を唱(い)うには、〈川柳〉が適切、という感が私に退(の)かない。(以上引用終わり)
被爆者たちは、忘れたくても「あの日」のことを忘れることができない。
本を紹介しておいて、まだ読見切っていない私です。(私は多川貫首の文章で知りました。)
昨今人の痛みに想いが届かない言動ばかり目立ちます。近々じっくりとお手合わせ願います。相撲も始まります。琴欧洲がんばれ。
by 呑亀 (2007-07-05 12:16)