「らいら」31年10カ月の歴史に幕 [酒場]
新宿二丁目に「らいら」というバーがある。
「らいら」とはアラビア語で「一夜」の意味である。
嬉しいとき、つらい時、さびしいとき、、、、、、様々なシーンで25年以上通ってきた店だ。
20代半ばから通い始めたその店に一人で入るのは、はじめは勇気がいった。
新聞記者、テレビ局、広告代理店、カメラマン、デザイナー、画家、評論家、俳優、演出家
映画監督、美容師、建築士、僧侶、サラリーマン、、、、怖そうな年上のお客さんたちから
店に入るときにじろりと睨まれているような気がして、子供だった私はたじろいでいたのだ。
それでも、毎夜毎夜、私はこの酒場に通い続けた。
そして、あとでわかるのだがみんな肩書なんかどうでもよい人たちばかりだった。
始めて声を掛けてくれたのはS兄だった。朝までよく飲んだ。
他の方とも様々なご縁で、芝居やいろんなイベントをやるきっかけや、かけがえのない、先輩、友人、
仲間を得ることができた。
しかしS兄ももはやこの世にはいない。一緒に山登りに行ったS-Aさんも鬼籍に入られた。長い間
闘病されていたKさんも今年亡くなられた。皆さんそれぞれ自分のスタイルで生きておられた。
それを模範にし、参考にし、少しでも近付こうとあがいていた。
「らいら」は世界であり、そこで過ごした幾千の夜、数々の出会いは、私の血となり肉となり、
大人への階段を登らせてくれた教室であり、修練を積ませてくれた劇場でありました。
そして「自由な魂」とは何かを教えてくれた場所であります。
一人で、二人で、仲間たちと酌み交わした酒は、いずれも心にしみわたる、大都会の中の
オアシスの水のようでした。暗闇の中、手探りで歩く私の足元を照らす、ランプの光でした。
昨年3月6日に新宿浪曼坊で30周年記念パーティーを開いたばかりでしたが、諸般の事情により
この12月28日で閉店することになりました。
たくさんの思い出は語りつくせませんが、新たな旅立ちにエールを送りたいと思います。
「らいら」さんありがとうございました。
本当に感謝しています。
心の中の「らいら」は永遠です。
お疲れ様でした。
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