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吉村昭さん逝く [追悼]

作家の吉村昭さんが亡くなった。
 
7年前に吉村さんの「海の祭礼」をモチーフにして「時の面影(おもかげ)」という芝居を書き、長崎
の松森神社と青山・梅窓院で上演したことがある。
 
「海の祭礼」はラナルド・マクドナルドという一人のアメリカ人が主人公だ。
インディアンの血を引く彼は、日本に行きたいという思いが募り、捕鯨船に乗り込んで自ら幕末の
日本に向かい、北海道で囚われの身となる。
長崎に送られた彼は当然のごとく英語しかしゃべることができない。
オランダ通詞(通訳)の森山栄之助がマクドナルドの係になるのだが、初めて聞くネイティブ・
イングリッシュの意味が全くもって分からない。
そこで、日本に護送される途中で覚えた片言の日本語を使い、マクドナルドは森山に英語を
教えることになる。
日本最初の英語教師といわれるゆえんである。
それまで外国語といえばオランダ語だったのだが、折しもイギリスの船の来航(フェートン号事件)
などで英語の必要性が高まり、英語通詞の育成が急を要していた。
のちになって森山はペリーとの交渉などで、その英語力を大いに役立てることになる。
めぐりあいとは不思議なものだ。
そういう時代の背景がなければ、この二人は出会っていなかったに違いない。
話をはしょりますが、いろんなことがあって、故郷のアメリカに帰ったマクドナルドは息を引きとる
ときに「SAYONARA(サヨナラ)」とつぶやいたそうです。
素晴らしい本でした。
吉村さんは他にも、きちんとした取材に基づく骨太の名作を数々書いておられます。
ご冥福をお祈りいたします。
 
この公演で主演したわが師、わが同志の東野英心さんも亡くなられて早6年。
今年11月に七回忌を迎えます。
 
マクドナルドのレリーフ(長崎市下西山町)
 
海の祭礼

海の祭礼

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 文庫
 
 

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narkejp

はじめまして。吉村昭さんの作品は、『海の祭礼』や『アメリカ彦蔵』などの幕末ものや、『白い航跡』などの医家ものが好きでよく読みます。先日は、テレビで森山栄之助を取り上げており、テレビカメラを通じてでしたが、日米和親条約の原本の末尾に Moriyama Einosuke という署名を確認できて、ちょっと感動しました。
当方の記事をトラックバックしますので、よろしければ読んでみてください。
by narkejp (2006-12-03 18:21) 

kaz-i

>narkejp さま
コメント&トラックバックありがとうございます。
昨日私もTV拝見しました。
あまり脚光を浴びることのなかった、森山栄之助が取り上げられていて
身内が紹介されているようで嬉しく思いました。
記事も拝見させていただきます。
by kaz-i (2006-12-03 21:36) 

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