半島を出よ [読書]
先日読了。
物凄い情報量を、これでもかとぶち込んである力作だ。
NPO、ホームレス、流通、医療、政府機関、爆弾、毒物、軍隊組織、南北問題、安保、
近未来の日本、そして北朝鮮の暮らし・・・・・・。
それぞれが、一個の爆弾を構成する化学物質のように、作品に盛り込まれている。
東京で読み始め長崎で読み終わった。
舞台となるシーホークホテルは、仕事で何度か行ったことがあり、姪浜には肉親も住んで
いるということとも相まって、より鮮明に話が感じられたようだ。
そしてまた、北朝鮮にも行ったことがあるので、なおさら興味深く読んだ。
北朝鮮側から見た板門店の向こうの韓国軍兵士は、アメリカの軍服を着ていた。
映画「JSA」での両国の兵士の思いがよみがえる。
イシハラのもとに集まる若者達は「コインロッカーベイビーズ」の末裔か。
荒唐無稽なようで話にリアリティーを感じるのは、緻密な取材の積み重ねがあったからだと思う。
ワクワクしながら読み進んだが、やりきれなさが残るのは、書かれている日本という国家、日本人
の無力さから来るのか。
昨今の、金儲けをしない奴は馬鹿だといわれているような風潮。
ローマ帝国末期のコロッセオのような格闘技ブーム。
何もかもお笑いですましてしまうようなバラエティー番組。
日本人は、まじめで従順なだけが取り柄なのか。
これから何を考え、どう生きるのか、そしてどこへ行こうとしているのか・・・・・・。
そんなことも考えた。
まじめな国民が、少しでもこの国に生まれてよかったと思えるような日本になるように。
一部の利益のために動くのではなく、志や哲学を持った指導者が現れることを切に願う。
村上龍には、日本のリーダーが日本人ではなくなる日を想定したSFをぜひ書いて欲しい。
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